2016.07.27

アニメ 三文字動画はもう古い!?迫るフィリピンのアニメスタジオ

chinaアニメの外注と言えば中国・・・という時代は終わるのか

国内アニメ制作事情が厳しいと言われ続けて、数十年経ちます。アニメーターは薄給で多忙を極める原因は、漫画家手塚治虫氏が手がけていた手塚プロのアニメで、常人には考えられないような予算とスケジュールで短期間低コスト、ハイクオリティなアニメを実現してしまったからだという説もありますが、なかなかその状態を抜け出せないままに、予算アップよりは更なるコスト削減をという方向性での解決を図った結果、国内アニメーターにはメインを任せ、その他の枚数の多い動画の作業を、安価でたくさんの人員の手を動かせる中国に外注しようという動きが活発になりました。そこで、まだ日本のアニメに不慣れだった中国に大量発注した結果生まれたのが「三文字動画」と言われる、中国製動画のアニメーションです。

「三文字」とは、アニメのEDテロップに流れる制作スタッフの名前が中国人の三文字の漢字の名前になっており、日本人風の名前よりそれらの漢字三文字が並んでいる数が多いということを示し、予算をかけず複数人が関わっていることで統制が取れていない低クオリティなアニメのことを揶揄する言葉としても使われています。中国人が悪いというわけではなく、不慣れな中国スタッフに日本の文化の最たるものである日本の萌えテイストを多分に含んだアニメを人海戦術で作らせると言うことに問題がありました。いまはだいぶ中国のスタッフも日本のアニメテイストに慣れてきているのでクオリティは上がってきています。しかし、その分値段も上がっているので、海外への指示費なども含めると今や日本のスタッフを使った方が安く上がるという場合も増えてきてしまっており、日本のアニメ業界ではコスト削減のため新たな施策を採る段階に変化してきています。

3D printing word cloudコストダウンの一環としての3D

その第一手として、手描きアニメからCGアニメへの移行が試作されてきました。いままで手描きで全てのセル画を描きおこしてきたアニメ制作の現場では、どうしても描ける人員の人数と時間の確保が必要で、人間の活動にも限界があるため、どんなに頑張って描いても関わる人数が膨らみ、時間の圧迫もあったため、少ない予算で現場への負担が募るという結果になっていましたが、ロボットやモブなど特に人の手で描くには時間も技量もかかるような部分を徐々にCGに移行して行くことによって大幅な時間コスト減を図ったのです。

しかし、これにも問題があり、当時日本のアニメ業界ではいかに紙に早く美しく描くかというのが価値基準だったため、CGへの移行は必ずすもスムーズに進んだわけでは無かったのです。ディズニーやピクサーでハイレベルなフルCGの映画が公開される中、日本のCGアニメは大幅に後れを取りました。フルCGで勝負した映画もありましたが、興行収入はふるっておらず、日本の慣れ親しまれた手描きアニメのテイストを残しつつCGで作業を縮小するという日本独自のニーズを叶えるために国内であらゆる施策が試されましたが、手描きアニメーターからのCGアニメーターへの移行は難しく、一部のアニメプロダクションを除き、現状は国内CG会社にCG制作部分だけ依頼して2D・3Dは分業・分社体制を取っているところがほとんどです。

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前述のディズニースタジオですが、当然のことながらハイクオリティなフルCGアニメーションを制作するのに自社のみで行っているわけではありません。フィリピンの現地アニメ制作会社、トゥーンシティ(マンダルヨン市)にはウォルト・ディズニー傘下の北米アニメスタジオから「この原案を基に背景を描いてください」。といったような指示が飛んできます。米欧のアニメ制作は国際分業が進み、脚本や絵コンテを大手アニメ会社が手がけ、手間と時間のかかる作画工程は人件費の安い国に外注されるようになってきています。ちょうど、日本と中国の関係性に似ていますが、違うのはCGに特化しているという点です。

アニメだけでなく、ゲームのCG制作作業も請け負い、2014年には自社のCGアニメーター養成学校を立ち上げたトゥーンシティは、さらに人員を拡充し、ゆくゆくはオリジナル作品を作る事も視野に入れていると言います。日本のスマホゲーム系企業も一部、フィリピンにCG部分を依頼している会社もあると言い、さらにフィリピンのCGアニメ事業は拡大していく傾向が見られます。日経新聞によるとフィリピンのBPO市場は年20%近い成長を遂げており、10年前と比べると7倍の伸びがあります。ディズニーの下請けとして力を付けたフィリピンが今後オリジナル制作をするにあたって、逆に日本を絵コンテや原画の下請けとして使いたいという希望が出てきてもおかしくはありません。アニメ業界が外貨を稼ぐようになるということ自体は新しい可能性に満ちている前向きな話ではありますが、日本人としては少し複雑ですね。コストダウン以外にも日本のアニメ界が考えていくべき問題はたくさんありそうです。

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PROFILE

大山 莉加 執行役員

大山莉加

ラクジョブ運営会社ビ・ハイア株式会社のBLofBLにして、千葉出身の東京都港区民。肉食系女子に見せかけたBL。BL好きのコスプレイヤーと思いきや日本で最もアニメゲームマンガ業界の案件情報、ビジネスマッチングに優れてるのでは・・・と思わせる情報量。彼女のおかげで倒産の危機を乗り切ったり、突然ラインが空いた!!という悲劇を乗り切ったアニメゲームマンガ業界の社長も多い。