2016.03.11
遊技機案件が底を尽く!?次の仕事はどの業界?実際に聞いてみた
遊技機の規制が取りざたされ、メーカーの動きが鈍くなって数ヶ月経ちました。現在、遊技機映像制作を請け負っている企業さまからは「進めていた案件もそろそろ終わりに近づき、社内の遊技機案件が0になりました・・・」という話をよく伺います。自社の制作ラインの大きなウェイトを遊技機映像制作に取っていた会社はひとたまりもありません。社内に抱える映像制作スタッフを食わせていくためには遊技機の仕事を持っている会社を何とか見つけ出すか、遊技機以外の映像制作案件を探すしか有りません。では、各企業はそれぞれどういった方向転換をおこなっているのでしょうか。
昨今のテレビアニメ・劇場版アニメには3DCGが多様に使われています。見た目は2Dの手描き作画のように見せていますが、複数のキャラクターが登場するシーンやロボット・戦艦などディティールの細かい、作画に時間を要するようなオブジェクトに関しては3Dに置き換えられていることが多いです。そうしたテレビシリーズのアニメCGを請け負う方向に転換しているのがD社。「遊技機の案件に比べて、テレビシリーズのアニメCGは相当人月単価が安いです。遊技機案件の半分以下のことも往々にしてあります。しかし、物量もありますし、放映が続く限り継続的に仕事が発生するので、社員を遊ばせておくよりはいいかと割り切っています。アニメ好きの社員も多く、喜んで取り組んでいるので、急場しのぎにはいいかと考えています。このままこればかりやりたい!と言われたら収益的には困ってしまいますが。。」と話を聞かせてくれました。
ただ、アニメCGには専門のノウハウが必要です。ソフトはMaxを使用することが多く、Pencilを使って繊細な線の表現を要されることもしばしばです。毎週の放映に間に合わせる短納期で量の多い制作が必須になりますし、アニメ業界は横のつながりで仕事を回すのがほとんどの、0から新規参入する会社には厳しいムラ社会。今からノウハウゼロで飛び込んで行くには参入障壁が高めだと考えて良いでしょう。
次に、テレビCMや映画・ドラマなどの実写CG業界です。これについて話してくれたのはF社。「テレビCMは本数が減り、映画・ドラマも視聴率や興行収入が下がっているせいか全体的に実写CG業界は値段が下がってきています。遊技機と比べると半分ぐらいが相場です。ただ、値段は半分になるものの、広告主などのクライアントがいて、その下に広告代理店、その下に映像制作会社という構図なので、広告代理店からの要求が高かったり、タイムリーな映像を作りたいなどの要望が出た場合は休み返上で取りかからねばならず、おいしい仕事とは言えません。しかし、実写業界には映画が好きでこの業界に入ってきた人達が多数いるため、安くても受けたいとか、大変でもエンドロールに名前が載ることが生き甲斐といったような映画人たちが軒並み上に控えてものすごいクオリティと情熱で仕事をこなしているので、これから新しく参入するという会社は辞めておいた方がいいと思います。」という御意見でした。
短納期かつ、実写の人物に合わせた独自のCG技術が必要だったりと高いクオリティを要求されるにもかかわらず単価は安く、その条件でも喜んで仕事を請け負っている業界歴の長い猛者たちが上に控えているとあらば、ここには首を突っ込まない方が良さそうです。
次に、ゲームCGです。ソーシャルゲームSAPのI社はこう話します。「ソーシャルゲームは今まで2Dイラストを中心にカードゲームを展開していきましたが、これからの時代はリッチな3Dエフェクトや、3Dのアニメーションで派手に動くゲームが求められてきます。そこで、いままで全て外注に出していた2Dデザインを3Dに切り替えていく時期が今後出てくると思います。実際に3Dを使用したアプリが当たり始めているので、リリースの本数を増やしていきたいと考えているメーカーは多いのではないでしょうか。弊社でも100名以上いる社員の中で3Dデザイナーはたった4名しかいません。社員採用を考えていますが、リリースまでにスピード感が求められるので現状は外注先も多数必要です。ただ、今まで3D発注をしたことがないので相場観がわからず、2D時代と比べるとかなり外注費が高くなることを予想しています。どのぐらいの予算でどんなものが作れるのかによって検討の余地はありますので、御提案頂きたいです。」
ゲームCGとしてはアーケード格闘ゲームやコンシューマーのFF7などが最初に導入された例としてもうそろそろ20年ぐらいの歴史になりますが、こちらも独自の進化を遂げています。遊技機映像制作会社が気をつけるべき参入障壁としては、ゲームCGは「映像技術」だけでは乗り切れない技術的な変革を要されるという部分です。『FINALFANTASY』などではムービー部分も多様に使われて居ますが、ゲームの大多数は、コントローラーの操作に準じて動くプレイアブルなCGの部分です。3Dデータや映像データを作って納品するだけでなく、ゲームとして動く「ゲーム用データ」の形でCGを納品することが求められます。ある3DCGプロダクションでは、ゲーム制作案件しか請け負わないというポリシーを持ち、自社のことを3D屋ではなくゲームデータ屋だと定義しています。ゲーム業界での3Dはあくまでゲーム用のデータとしてUnrealEngineやUnity上で動くものを作れて初めて需要があると言っても過言ではありません。
PS3やPS4、Vitaなどでのコンシューマー機は全体的にリアル系CGキャラが動くUnrealEngineやC、C++と独自のエンジンを組み合わせて動かすゲーム、スマホアプリなどトゥーン系、低頭身キャラが動くUnityなどを使用して作られるゲームに大まかに別れます。それぞれ、人月50万円〜が相場です。参入前に、どうしても遊技機映像制作よりは単価が下がるという前提を踏まえた上で新しい技術を習得してでもゲームCGを始めたいかは考えるべきですが、今後PS4やスマホの出荷台数が増えるのに従ってゲームソフトやアプリの本数も増えていくことが予想されます。特に、スマホアプリは本数の回転が速いのもありますが、当たったアプリは運営が続く限り新規キャラや武器、エフェクトなどの制作も毎更新ごとに増えていきますので、継続して仕事に就けるという旨味はあるでしょう。
前述の通り、ソーシャルゲーム系企業はまだ3D外注会社を探すのに慣れていません。驚くほど安い単価を提示されることもあるでしょう。しかし、逆にイニシアチブを握ってしまえば仕事がやりやすくなるという可能性もあります。元いるゲーム系CG会社にどのような部分で勝っていけるかという問題もありますので、十分に検討と営業方針を定める時間を取った方が良いですが、現段階で遊技機案件の穴を埋められそうなのはゲームCGと考えるのが一番現実的です。
ゲーム系の3D案件のご相談も弊社宛にいくつかいただいているので、どういった会社がどういう条件で協力先募集をしているのかなど、お気軽に御質問いただければと思います。
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