2016.01.20
3DCGソフト 生き残り戦争 SoftImage亡き後、次なる統合可能性は・・・
エンターテイメント業界で大注目の3Dコンテンツ。今や当たり前になってしまいましたが、古くは『バーチャファイター』が1993年(古いと言ってもほんの22年前)にアーケードゲーム界を震撼させました。3Dで人型のキャラクターが2体、スティックを動かしボタン入力をしたのと同時に動いて戦うなんて言う衝撃の映像は当時の人たちの度肝を抜きました。その後3D格闘ゲームのジャンルを『バーチャファイター』が牽引し、セガは自社オリジナルのコンシューマー機『セガサターン』を作成、そのローンチに『バーチャファイター』を移植するなど一時代を築き上げました。
そして同じく3D描画エンジンを積んだコンシューマー機『Playstation』が発売されたのが1994年です。その3年後、1997年には『FinalFantasyⅦ』がFFでの初の3D作品として発売されました。
そのときの衝撃たるや、弊社代表の清水の言葉を借りて言うと
「衝撃なんてものじゃあないッッ!!TVシリーズのマジンガーZしか見てなかった人が、いきなり劇場版エヴァQを見せられたかのような、もう、次元が違う!!な、な、な、なんじゃあこりゃあぁぁあああ!!!??というような衝撃だ!!」
だそうです。18年前じゃあ、私はまだ生まれてないのでわからないんですけど(永遠の17歳設定)、かなりの驚きそして興奮具合が見て取れます。ちなみに、この『FinalFantasyⅦ』は『Playstation』のハード普及を助けた名作でもありました。
ハードスペックに合わせてソフトスペックも向上 表現は無限大
昔のゲームには、スペック・容量の限界がありましたが、技術の進歩により現在では開発時にもほぼ気にしなくて良いほどに容量が大きくなってきました。発売当初の『Playstation』容量が2メガバイトなのに対し、現在の最新機種『Playstation4』は2015年12月3日に1テラバイトの容量を積んだバージョンが発売されることが発表されました。
つまり『Playstation4』は『Playstation』の524,288倍の容量を積んでおり、この20年の間にゲーム業界はものすごい量の情報進化をしてきたことになります。ハードスペックが上がれば、当然中身のソフトの質も向上せざるを得ません。現にFFは最初の頃の3Dと比べても実写映画と見間違うほどの圧倒的な映像としての美しさを兼ね備え、インゲームのモーションですらブレもスキもない完璧な動きを3Dで表現しきっています。そんな3Dの美しさともに進化してきたもの。それは、3Dを作るツールです。
2002年にMaya4.5からmental ray for Mayaが無償ダウンロード開始され、2005年にライバル社だったAutodeskにMayaのエイリアス・システムズ社が買収されると、もともとの顧客層にもマッチし、世界全体ではMaya・Maxが半分ずつのシェアに。日本国内では、Mayaが半分と、残り半分をMaxとSoftImageとで分け合うような結果になりました。
また、2008年にSoftImageのアビット・テクノロジーがAutodesk社に子会社としてSoftImage社を買収したことで、主要3Dソフトウェアは全てAutodesk社が販売する体制となります。今まで、Mayaなら拡張性の高さ、Maxならプラグインの多さ、SoftImageならフェイシャルアニメーション作成の簡単さがそれぞれ売りでした。今まで別々の企業が扱っていたからこそそれぞれの強みごとに買って使い分ける企業もありましたが、販売会社が同じになったことで分ける必要もなくなってきており、ついに最も総合力の低いSoftImageが2014年4月の最終リリースを持って販売停止となってしまいました。
ハイエンドゲームの映像部分の要である3Dソフトが販売停止になるということは業界にも大きな打撃を与えました。主にSoftImageを使用してゲーム映像制作を行っていた有名どころとしては、『三國志』シリーズや『無双』シリーズでもおなじみのコーエーテクモゲームズがあります。新ハードが出れば必ずローンチ作品を出しているような業界の最先端で他を引っ張る立場の企業ですので、今までメインで使っていたSoftImageが販売停止になり、新バージョンが今後出ないとなると、社を上げて別のソフトへの移行を余儀なくされました。
そのため、発表が出る前から少しずつ進めていた社内デザイナーのMaya修練を本格化し、ソフトの買い換えも行わなくてはなりません。2015年3月期のコーエーテクモホールディングス財務諸表を見ると、買掛金が前年度比9億25百万円増加しています。全てがソフトウェア代金とは言いませんが、Maya1台新規購入で約20万円ほどかかります。コーエーテクモホールディングス社員1,497名のうちどれだけが3Dデザインに関わっているかはわかりませんが、市ヶ谷にも日吉にもそれぞれ3Dデザイナーを配置していることも考えると、相当な負担額だったのではないかと予想できます。コーエーテクモほどキャッシュフローに余剰があり、上場している会社だからこそこうした方向転換が決断できましたが、コーエーテクモと付き合っている20〜30名のCG会社も同じように変化して行かなければ顧客を失うことになりかねません。ソフト1つでも、ソフトパワーなくして制作ができない制作会社からしてみれば大問題です。
こうしたSoftImage販売停止事件を鑑みると、今後もしかしたらまたAutodesk内でソフトの統合が行われるかも知れないという不安も出てきます。今のところMaya、Maxはそれぞれ持ち味があり、評価もほぼ互角です。
前述したとおり、Maxにはプラグインの豊富さという武器が有り、特にトゥーンレンダリングの3Dを2Dのように見せる日本独自の技術ではMaxのプラグインである「Pencil」がよく用いられます。ゲーム業界ないでは全体的にMayaが使われることが多いですが、当初の値段の安さと2D的な描画性能が評価されてアニメ業界ではMaxに親しんでいる会社の方が多く見られます。しかし、ゲーム業界とアニメ業界の企業数で比べると圧倒的にゲーム業界の方が多く、社内プログラマーがMaya用にプログラムを組んで拡張させ独自のMayaカスタマイズを行っていることもあります。もし今後どちらかがなくなるとしたら、なくなって困るのは圧倒的にMaxの方です。
Mayaはなくなったとしても各社それぞれカスタマイズしてある独自のソフトになっているので更に拡張開発していけばサポートが無くなった後もしばらくは使い続けられる可能性がありますが、Maxの方は、提供されるプラグインともども無くなってしまったらその後の制作に支障が出ます。そう考えるとAutodesk側としてはMayaを残しMaxを販売停止にしてMayaへの新規販売促進を狙う方が旨味がありそうです。まだAutodeskから統合や販売停止の発表は出ていませんが、こうしたリスクを考えるとMaxオンリーの会社は人材を教育し今のうちにMayaも用意して、両方使えるようにしておいた方が良いと思います。上記はまだまだ個人的な想像の域を出ませんが、各社検討してリスク回避に動くのは無駄なことではないと思いますよ。
『FinalFantasyⅦ』http://www.jp.square-enix.com/ffvii_remake/
『マジンガーZ』http://www.toei-anim.co.jp/lineup/tv/mazingerz/
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』http://www.evangelion.co.jp/3_0/index.html
PS4 http://www.jp.playstation.com/ps4/
Autodesk http://www.autodesk.co.jp/
コーエーテクモホールディングス2015年3月期決算短信
http://www.koeitecmo.co.jp/php/pdf/ird1_20150430.pdf
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