2016.01.07
ヒットタイトルを作るために必要なこと 任天堂 故岩田社長がこだわった市場規模とビジネスモデル
モンスターハンタークロス4つ買いました
ゲーム総合情報メディア“ファミ通”が昨日、2015年の国内家庭用ゲーム市場の速報まとめを発表しました。集計期間は2014年12月29日~2015年12月27日です。(参考1)同まとめによると2015年の国内ゲーム市場規模は3209.7億円で、ソフトランキングのトップは『モンスターハンタークロス』。
ハードはニンテンドー3DSが累計販売台数2000万台突破で、ソフト・ハードともに3DSの圧勝という結果になりました。
【各ハードの販売台数】
(累計販売台数の集計期間は各発売日~2015年12月27日)
ハード名/メーカー名/発売日/推定年間販売台数/推定累計販売台数
ニンテンドー3DS※1/任天堂/2011年2月26日/218万9900台(2003万6956台)
プレイステーション Vita※2/ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア/2011年12月17日/95万9342台(438万2417台)
Wii U/任天堂/2012年12月8日/82万304台(294万3587台)
プレイステーション4/ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア/2014年2月22日/120万5163台(213万0733台)
プレイステーション3/ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア/2006年11月11日/18万8207台(1020万6741台)
Xbox One/日本マイクロソフト/2014年9月4日/1万8093台(6万4051台)
※1:ニンテンドー3DS LL、Newニンテンドー3DS、Newニンテンドー3DS LLを含んだ合計値です。
※2:プレイステーション Vita TVを含んだ合計値です。
国内では3DSが圧倒的
2015年単体でのハードの売れ行きは2位のプレイステーション4にダントツで2倍の差を付けてニンテンドー3DSの圧勝。また、累計販売台数でも2006年から販売しているプレイステーション3に2倍の差を付けてニンテンドー3DSが2003万台とこれまた破格の数字をたたき出しています。
携帯機であるプレイステーションVitaと比較しても4.6倍ほど違うということと、WiiU、プレイステーション4、プレイステーション3、XboxOneなどの据え置機も含めた累計販売台数を全て足してもニンテンドー3DSの販売台数には及ばないという結果を見ても、コンシューマー市場ではニンテンドー3DSの独壇場だということが伺えます。
任天堂は2月27日に新ハードであるニンテンドー2DSの販売を控えています。今までの折りたたみ式携帯機をそのまま開きっぱなしにしたような、ゲームボーイに近い画面丸出し構造が吉と出るか凶と出るかに注目です。ローンチタイトルにポケモン4色をそろえてきていることから、ゲームボーイで初代ポケモンをプレイしていたアラサー世代を狙ってきていることが伺えます。正直、私自身は郷愁そそられまくりでほしくてしょうが無いです。
【年間ソフト販売本数 TOP10】
(累計販売本数の集計期間は各発売日~2015年12月27日)
順位:ハード/タイトル
メーカー/発売日/推定年間販売本数(推定累計販売本数)
1位:3DS/モンスターハンタークロス
カプコン/2015年11月28日/244万1977本(244万1977本)
2位:3DS/妖怪ウォッチバスターズ 赤猫団/白犬隊
レベルファイブ/2015年7月11日/196万5202本(196万5202本)
3位:3DS/どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー
任天堂/2015年7月30日/128万2880本(128万2880本)
4位:Wii U/Splatoon(スプラトゥーン)
任天堂/2015年5月28日/106万4897本(106万4897本)
5位:3DS/ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
スクウェア・ エニックス/2015年8月27日/86万4865本(86万4865本)
6位:Wii U/スーパーマリオメーカー
任天堂/2015年9月10日/67万4194本(67万4194本)
7位:3DS/モンスターストライク
ミクシィ/2015年12月17日/63万6709本(63万6709本)
8位:3DS/妖怪ウォッチ2 真打
レベルファイブ/2014年12月13日/62万5223本(263万2550本)
9位:3DS/リズム天国 ザ・ベスト+
任天堂/2015年6月11日/60万7343本(60万7343本)
10位:3DS/ファイアーエムブレムif 白夜王国/暗夜王国
任天堂/2015年6月25日/53万8669本(53万8669本)
ソフトの売れ行きは、ハードありきなことを考えても妥当な結果になりました。ランキング10位中8タイトルが3DS専用ソフトとなっています。コンシューマーはハードの販売台数が市場を作っているので、どうしても遊びたいソフトがあるがためにハードを買うという動機付けでない限りはすでに市場に一番出回っているハードの牙城を崩すのは難しそうです。実はもともとニンテンドー3DSは発売当初そこまで勢いは有りませんでした。
では、どうしてここまでニンテンドー3DSが普及したのかというと、任天堂の故岩田社長が掲げた長期的ビジネスモデルの舵取りが明暗をわけたのです。ニンテンドー3DS発表後、販売台数がふるっていない現状を見てハード普及が市場形成のために最も重要だと考えた故岩田社長は早い段階でニンテンドー3DSの値下げに踏み切ります。(参考2)一時的にハード売上が赤字になったとしても、長期的視点でハードが普及した後に続くソフト売上につながることと、販売店の不信感払拭を行い、安心してハードを入荷・取扱してくれるような土壌を整えることを最優先したのです。
このハード普及戦略が功を奏して、いまのコンシューマーハード販売台数圧倒的1位、ソフト売上市場のほぼ独占という実績につながっています。これだけ見るとゲーム市場はニンテンドー3DSが独占しているかのように見えますが、ニンテンドー3DSよりも売れているハードが他にあります。それは、スマートフォンです。今や携帯電話機という役割にとどまらずゲーム機としても昨日するスマートフォン。株式会社MM総研によると、2015年3月末時点でスマートフォン契約台数は6,850万件で、ニンテンドー3DSの販売台数の約3倍です。(参考3)
そのうち、スマホゲームプレイヤーは4,580万人ほどと言われています。(参考4)国内家庭用ゲームの市場が3,209.7億円と言われているのに対し、スマホゲームの市場規模は51.6億ドル。つまり6086億2,200万円なので約2倍の市場規模があるということになります。スマホゲームは無料プレイで課金方式を採っているため人気になり、運営が続かないと売上にならないとは言え、やはり普及台数と売上は連動関係にあるようです。
3DSとスマホ開発の開発費がほぼ同じぐらいになってきている中で、パッケージとして完結させ、販売本数一本で勝負というコンシューマーがいいか、運営の如何によって売上を伸ばせる可能性も売上ゼロで早期終了の可能性もあるスマホアプリ開発がいいかは各企業の意見も別れるかと思います。それを正しくジャッジするためには市場の規模とスマホ課金率のデータを読み取ることは必須です。
良くも悪くもスマホアプリは端末から簡単に削除ができてしまいます。逆に、ユーザー視点から見ても、一生懸命課金したコンテンツだったとしても運営が終了してしまった場合は全て水泡に帰すというリスクがあります。それに気づいているユーザーの課金離れの問題が今後どう動いていくかにも注目が集まります。現在スマホアプリ市場は世界でも日本が第2位と、上がるところまで来ていますが、海外市場を見てみるとまだまだコンシューマーには上がる余地があります。ピークのスマホ市場をさらに押し上げる施策を打てるか、はたまたまだまだ乗り込めていない世界のコンシューマー市場を狩りに行くか。未来のヒットタイトルを作るには、どこの市場が適しているのか、見極めの時はすぐそこまで来ています。
(参考1:http://www.famitsu.com/news/201601/06096700.html)
(参考2:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1108/01/news037.html)
(参考3:http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120150611500)
(参考4:http://www.gamespark.jp/article/2015/11/14/61757.html)