2016.01.06

ゲームロフト・ジレットがパートナーシップ締結 ゲームの新たな市場とは

1000607479568b1f6ed20630020ゲームとプロモーションの融合

ゲームロフトと言えば、フランスのモバイル・スマホゲームの大手で、日本を含め世界80カ国に展開しています。元々はユービーアイソフトの立ち上げメンバーだったミシェル・ギユモ氏が社長で、2007年第4四半期には携帯電話ゲームで世界一の売上を達成するなど世界で一番携帯ゲームの最先端を行っている企業と言っても過言ではありません。対してジレットはアメリカのカミソリブランドで、今はP&Gの管轄の元で世界展開しています。日本の薬局でもおなじみで『ジレットフュージョン』や女性向けカミソリ『ヴィーナス』シリーズが看板商品です。この、国も違えば売っているものも違う2社がパートナーシップを締結、というのはパッと聞いてもつながりが見つけられず困惑すると思いますが、一体どういうことなのでしょうか?

ここで両社のコメントを見てみましょう。(SocialGameInfo記事より抜粋※1)
▼ゲームロフト ビジネス開発部 ディレクター フランスワ・モンク氏
「ゲームロフトが持つ創造力のおかげでジレットの世界観にフィットし、ブランドの認知度を上げる楽しいミニゲームを開発することができました。ミニゲームという革新的なモバイル広告フォーマットでジレットのプロモーションを実施できたことを誇りに思っています」

▼ブランドマネージャー ジレット東南アジア ステファニー・チャン氏
「ジレットは変化する消費者のニーズと生活に合わせるため、常に新しいことにチャレンジすることを心がけている。マーケティング戦略も同様インプレッションが高い媒体やモバイル広告の最新技術を使用しています。ゲームロフトとのコラボレーションにより、現代の消費者を引き込む革新的な広告を製作できたと思います」

864943470568b1f6f40f2b0020今回2社が締結したパートナーシップは広告ソリューションに関するものです。実はゲームロフトはいち早くゲームの「広告媒体」としての価値を独自に打ち出し、自社HPで「プレミアムゲーム内広告ソリューション」の宣伝ページを作成していました。(※2)広告メニューは大きく分けて4つです。1つ目は、ゲームロフトブランドで作る広告主企業に合わせたオリジナルミニゲームに企業のロゴや商品のアイコンなどの広告要素を入れて実際にユーザーに毎日遊んでもらうことを目指すリッチメディア戦略。2つ目は既に配信されているゲームロフト製ゲームの重要なシーンに企業広告メッセージを差し込むネイティブ戦略。3つ目は常にゲーム内にバナーや広告を表示させるディスプレイ戦略。4つ目はゲームから動画へ誘導し、動画の最後に商品ページへ誘導するリンクをつけたビデオ戦略です。これらの4つのメニューからなるゲーム広告ソリューションに、既にディズニーやコカ・コーラをはじめとする欧米の大企業が参画しています。特に、『アナと雪の女王』の大ヒットが記憶に新しいディズニーは、広告コマーシャルの主戦場をテレビではなく動画メディアに本格的に移していこうと動いているのが見て取れます。テレビのように時間を固定されることなくいつでも携帯しているスマートフォンで、世界一のスマホゲームメーカーの抱える固定ユーザーに対して1ユーザー1日平均39分のプレイ時間の間にこまめに広告を見せられて、かつ大規模な放送網を使わない分コストが削減できることは顧客層さえ一致すれば企業にとって大きな利益になります。

求人広告は時代遅れ?アニメゲームマンガ人材採用とGoogleの変えたルール

こちらの記事でも紹介しましたが、ユーザーの購買活動はもはや商品を見ただけでは刺激されません。CMを見て、そこからどうやって検索につなげるか?がキモになっています。その点において、テレビCMとスマホCMでは圧倒的に違う部分があります。それは、今持っているデバイスで1クリックで商品の関連ページに飛べるかどうかです。例えTVCMを見ながらスマホをいじっていたとしても、検索ページを立ち上げて商品名を入力しない限り、商品の詳しい説明ページにはたどり着けません。対してスマホCMであれば、今手に持っているデバイスで1クリックするだけで商品ページ〜購入までできてしまいます。ゲームロフトとジレットのパートナーシップ締結は、一見関連性のないように見えて上手にユーザーをシェアできる新しい広告モデルに則った優秀な戦略モデルと言えます。

3いま、日本でもスマホ市場は爆発的に拡大し自社でオリジナルゲームを作成してヒットさせたいと夢を持って挑んでいるゲーム会社がたくさんあります。しかし、上記のような異業種とのパートナーシップ締結の話しはほとんど聞きません。たとえば以前、私宛てに地方のドラッグストアから販促アニメを作りたいのでアニメ会社と協業したいという話が舞い込んできたことがありましたが、アニメ制作の費用とCMをアニメにしただけのTVCMの費用対効果が合わず話が流れてしまったこともありました。アプリ内バナー広告が盛んだった時期もありましたが、アプリ内広告の代理店任せで、スポンサー企業とゲーム会社が制作費用と費用対効果の関係をデータとして見つめて本気で取り組もうという動きはありませんでした。

ゲームはゲーム同士とでも言うようにゲーム間でのコラボレーションを盛んに行い、イベントで一時的にユーザーを盛り上げることによってガチャなどへの誘導を行ってその売上を運営や次のゲーム開発に向けての資金に充てているケースがほとんどです。その他に、最初の開発資金を得るために一般向けに企画を開示し出資を募る「Kickstarter」などの個人投資モデルも見られるようになってきましたが、資金集めに成功するプロジェクトは希です。良いゲームを作るために必ずぶち当たる資金問題を解決させることができる1つの方法論として、異業種と手を組んでのゲーム内広告モデルの実用化が挙げられるかも知れません。そのためにも、まずは世界規模で展開しているゲームロフトの上げる広告成功例が実績として積み上がることは必須です。

今回のパートナーシップ締結はある意味、単発でのジレットからの広告発注ではなく今後本格的に2社間でスマホゲーム広告の可能性について研究・実装していくということの現れであり、新たなゲーム開発市場の拡大の一助を担うニュースだと言えます。1ゲーム開発会社に1スポンサーという開発モデルが広まっていけば、アニメ『TIGER&BUNNY』のようにスポンサーロゴを背負ったゲーム同士の切磋琢磨や戦いが生まれ、それ自体をコンテンツとする新しい需要も生まれなくはないような気もします。全くの異業種ではないですが、近い業界内では『SHOW BY ROCK!!』のように新規コラボコンテンツとしてプラットフォームを横展開するようなモデルも成功を収めています。コンテンツ想像力は無限です。単にビジネス上での利害関係だけでなく、パートナーシップ自体をコンテンツとして捉える動きもできれば更に面白いものができあがっていき業界の活性化にもつながります。コンテンツの新たな売り先・異業種とのパートナーシップによる市場の拡大という視点からゲームロフトとジレットのパートナーシップの今後の動向に注目してみると新たなアイディアも浮かぶかも知れません。

補足

大人気コンテンツへと成長

大人気コンテンツへと成長

全くの異業種ではないですが、近い業界内では『SHOW BY ROCK!!』のように新規コラボコンテンツとしてプラットフォームを横展開するようなモデルも成功を収めています。こんなのが増えていくと楽しいですね。

toiawase-1024x226-1

PROFILE

大山 莉加 執行役員

大山莉加

ラクジョブ運営会社ビ・ハイア株式会社のBLofBLにして、千葉出身の東京都港区民。肉食系女子に見せかけたBL。BL好きのコスプレイヤーと思いきや日本で最もアニメゲームマンガ業界の案件情報、ビジネスマッチングに優れてるのでは・・・と思わせる情報量。彼女のおかげで倒産の危機を乗り切ったり、突然ラインが空いた!!という悲劇を乗り切ったアニメゲームマンガ業界の社長も多い。